大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和22年(特)11号 判決

原告

丸永株式会社

被告

特許局長官

主文

特許局が同庁昭和二十二年抗告審判第一一四号事件につき、昭和二十二年十月二十九日になした審決を取消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求める旨申立て、その請求原因として原告は特許局に対し昭和二十一年十一月八日商標法施行規則第十五条に規定する類別第二十七類、綿糸を指定商品として、駝鳥の図形を描き、その右方下部に「駝鳥」の文字を配した商標の登録を出願したところ(昭和二十一年商標登録願第一一二三五号)特許局は、右商標は類別第二十六類の金糸、銀糸を指定商品として第一九六三〇四号を以て登録されている商標と類似して居り且つ、その指定商品も類似商品であるとの理由で出願拒絶の査定をした。原告は右査定を不服として、昭和二十二年八月二十一日更に抗告審判の請求をしたところ(昭和二十二年抗告審判第一一四号事件)、特許局は同年十月二十九日同一理由により本件抗告審判請求は、成立たない。という審決をした。

然しながら、原告の出願の指定商品たる右類別二十七類綿糸と、右特許局の引用する登録商標の指定商品たる金糸銀糸とは類似の商品ではないから右審判はこれを無視した不当の審決であるばかりでなく、右引用の登録商標は、訴外大阪市港區五条通り二丁目二十九番地山内弁次郞の出願により昭和三年一月三十一日登録されたもので、爾後二十年の存続期間の満了により、昭和二十三年一月三十一日を以て消滅したものであり、しかも右失効の日から既に一年を経過しているから、出願商標が右登録商標と類似し且つ、その指定商品が類似商品であると否とに拘らず、最早登録を拒絶せられる理由はない。よつて原審決の取消を求めると述べた。

被告指定代理人は原告の請求を棄却するという判決を求め、答弁として、原告の主張事実中原告の登録を出願する商標の指定商品である類別第二十七類の綿糸と、第一九六三〇四号を以て登録されている商標の指定商品である類別第二十六類の金糸、銀糸が類似商品でないとの点を否認しその他は全部認めると述べた。

理由

原告主張の事実は、原告の登録を出願している本件商標の指定商品と原審決の引用する第一九六三〇四号の登録商標の指定商品が類似商品であるとの点を除き、全部当事者に争ないところである。然らば原審決引用の登録商標は、特に存続期間が更新された主張のない本件においては右商標の登録の日たる昭和三年一月三十一日から二十年の存続期間を経過した昭和二十三年一月三十一日を以て消滅したものといわなければならない。しかもその後一年を経過した現在においては、出願商標が右登録商標と類似し、且つその指定商品が類似商品であるとの理由によつてこれが登録を拒絶することができないこと明らかである。然らば他に出願登録を拒絶する理由の主張のない本件においては、原告の請求を排斥した原審決は、これを取消すべきものである。よつて原告の出願請求を正当として認容し、訴訟費用につき、民事訴訟法第八十九条を適用し主文の通り判決する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例